パンデミックの後、世界のホテル産業は目ざまいい成長を遂げました。 D-EDGEによる2023年のホテル・オンライン販売トレンドレポートによれば、2022年のオンライン売上は、2019年比で欧州では49%、アジアでは7%増大し、2023年にはこの傾向がさらに続くとされます。
しかしながら、今年は成長速度が鈍化する見込みで、OTA予約は直接予約よりも伸びが速いため、ホテルの収益性を圧迫します。 オンライン予約の大半はBooking.comとダイレクト・ウェブサイトの2つを通してなされているため、ホテルはダイレクトチャネル、地域及びニッチなOTA、ホールセーラー及びGDSにおける売上の機会を逸失しています。
いかなる市場条件においても、マーケットシェア及び収益性を向上させるには、効率、及び機動的なテクノロジーを盛り込んだ様々な流通戦略が必要となります。 現在の複雑な流通ランドスケープにおいて、統合、統括及び自動化のメリットを享受するためにCRSを軸とした戦略するホテル企業が益々増えています。
PMS:ホテル業務に適していますが、販売のために設計されてはいません。
レベニューマネージメント戦略において最も重要となる意思決定の一つとして、ルーム料金およびインベントリーの一元的保管場所および正確な情報源としてホテルのメイン流通システムとなるソフトウェアの選択が挙げられます。 従来はPMSがこの役割を果たしてきましたが、ごご数年はその限界が益々露呈してきています。
PMSが考案された1980年代には、インターネットがありませんでした。
流通販売は比較的簡単なプロセスだったため、PMSだけで事が足りました。 その後、オンライン及びオフラインでの販売チャネルが激増し、PMSでは十分な対応ができなくなりました。
悪く取らないでください。私たちは PMSのパートナーを大切に思っています。しかし、PMSは流通販売ではなく、業務管理を目的に構築されたものです。 販売プラットフォームとしては、限られた性能と接続性の問題がネックとなり、スピードが遅く効率が良くありません。 クラウドベースの改訂版プラットフォームには若干の進歩はみられますが、これは特に、旧来のPMSプラットフォームを利用している、複数のホテルを擁するホテルグループのオペレータについて言えることです。
一方で、 CRS (総合予約システム)は、 流通を管理する目的で構築され、ホテルに対し、流通ネットワークを介した予約に関する高い柔軟性、リーチ、接続性、コントロール性を提供し、売上も増強されます。
h2cの2022年グローバル・ホスピタリティ・ディストリビューション調査によると、大手ホテルチェーンの89%がCRSに軸を置いた戦略に シフトしたとのことですが、これは驚くに値しないでしょう。. しかしながら一方で、中規模ホテルチェーンの33%、また小規模ホテルチェーンの58%が依然としてPMSを主要販売システムとして使い続けています。 この調査の対象はホテルグループに絞られていますが、独立系ホテルではこのパーセンテージが更に高いと推測されます。
CRS:ホテル販売の中枢
CRSはしばしばスタンドアローン・ソフトウェアとみなされますが、実際は以下のコンポーネントを含む流通アプリケーションに接続されたネットワークです。
- 統括インベントリー管理 – 料金、インベントリー及びコンテンツの管理用
- インターネット予約エンジン(IBE) – ホテルのウェブサイトを介した直接予約用
- チャネルマネジャー(CM) – OTAsを介した予約およびホールセーラー用。
- グローバル流通システム(GDS) – 旅行代理店、TMC(旅行管理会社)またはコーポレート・トラベルマネジャーを介した予約用。
- 総合予約オフィス(CRO) – ホテルのコールセンターまたは受付を介した予約用。
- 決済ゲートウェイ – オンライン決済手続き用 及び決済手段の有効期限チェック用
- ビジネス・インテリジェンス(BI) – 複数情報源からのローインフォーメーションを集計し、大容量データのトラッキング、解析、解釈のため
CRSはまた、予約とインベントリーを同期化するためにPMSにも接続されています。 これらのコンポーネントは、ホテルのセットアップに応じて、統合プラットフォームの構成要素として一社のベンダーによって提供される場合と、複数のベンダーによって、アプリケーション・プログラミング・インターフェース(API)に接続される場合が考えられます。 レベニューマネージメントシステム(RMS)、顧客関係マネージメント(CRM)、ソフトウェアなどの追加的サードパーティ・ソリューションもAPIによって接続することができます。
CRSを軸とした流通戦略の6つの重要なメリット
CRSを軸とした戦略への移行がまだ完了していないホテル会社は、以下を含む数々のメリットを失いつつあります:
1. ホテルの価格及びインベントリー管理の一元化
CRSの存在意義は、予約チャネル全体におけるホテル料金戦略を策定実施するプロセスの一元化および自動化です。 これによって、流通ネットワーク全体を通し、客室料金及び空室状況がアップデートされ現状況の食い違いが解消されます。
CRSのハブはセントラル・インベントリーマネージメント機能で、ホテルは同機能を利用して、料金プラン、インベントリー、客室の記述、システム環境、リポーティングおよび関連業務の管理ができます。 レベニューマネージャーは、予約状況の概観、マーケットセグメント毎の業績の分析、料金パリティの監視、予約チャネルの開閉ができます。
ホテル管理会社は、これらの機能によりホテルのポートフォリオ全体を一元管理でき、これにより、本社または地域のレベニューマネージャーがホテルの業績をモニターし、ブランドの一貫性を保つことができます。 一方、現在市場に出回っているPMSを軸としたモデルの大半は、情報閲覧や変更のためにはレベニューマネージャーがホテル毎にPMSにログインしなければなりません。
アートテルグループにおいては、インドネシアにある100軒以上のホテルを一元化された販売エコシステムで管理することが成長戦略の重要要素となっています。
当社は、お客様の期待を上回るようなスムーズで個別化された旅程を創案・提案し、競合他社と一線を画すことを目指しています。 デジタルトランスフォーメーションを取り入れることで、業界のリーダーとしての地位を築き、絶え間ない成長と成功を期した姿勢を貫きます。
2. 統合及び使いやすさ
流通テクノロジーが複数のベンダー間に分散している場合、ベンダーとの関係を管理しタイムリーな支援を受けることは、ホテル経営者にとって骨の折れる作業となります。 CRSを軸とした戦略において、一社のメインサプライヤーの下では流通テクノロジーが統合されます。
このモデルでは、チャネルマネジャーが予約エンジン、決済ゲートウェイ、その他のソリューションについて別々のべンダーとそれぞれやり取りをするのではなく、主要べンダー一社とやり取りをするだけで済みます。 レベニューチームは、習得が容易で、業務もシンプルで高度に自動化された統合プラットフォーム上で、一つの顧客支援センターと協業します。
クラウドベースのCRSテクノロジー、ハードウェア及びソフトウェアはオフサイトに配置されているため、スタッフはホテルからでも本社からでも、また地域オフィス、ホームオフィスからでも、どこからでもシステムにアクセスできます。
統合されたCRSプラットフォームによりテクノロジーコスト、トレーニングのニーズおよびダウンタイムを縮減することができます。 レベニューマネージャーは、データ分析、販売コストの削減や売上向上方法の模索により多くの時間が割けるようになります。
3. 価格及びインベントリーのコントロールにおける柔軟性
CRSから料金及びインベントリーを管理する場合、ホテルは流通チャネルにより料金設定及びコントロールに際しより高い柔軟性を享受します。 ホテルは、コミッション及びフィーが廉価なチャネルを優先でき、ホテルのウェブサイトにおいてのみ享受できる特別な販促やパッケージを創り込むことも可能となります。 これは直接予約の増大と流通コストの削減につながります。
ホテルは客室タイプによってではなく、客室の等級によってインベントリーを販売することができ、特殊な客室タイプではなく、スタンダード、デラックス、キング、ダブルなどの客室の等級のみにコミットするため柔軟性が高まります。 これにより、インベントリーの管理がしやすくなります。
バリのエコシステム・ホテル&ヴィラスは、シームレスな予約手続きが提供できるように統合CRSプラットフォームに移行した後、 年々、直接予約が300%増大し、現在では客室ビジネス全体の35%を占めるに至りました。
4. 流通チャネル及びソフトウェアを通したシームレスな接続性
ホテルは、マルチチャネル流通戦略を続行することで、地域及びグローバル市場において幅広い旅行者の目に留まることになり、予約数、売上、ADRの増大につながります。 チャネル及びソフトを介した予約、レート、空室状況の円滑でタイムリーなフローにとって重要なのは、リアルタイムによる接続性です。
h2Cの調査によれば、ホテルチェーンは、大手では26のチャネル、中規模チェーンでは23チャネル、小規模チェーンでは12チャネルの外部販売チャネルを使い、平均18のサードパーティ流通チャネルを利用しています。 しかしながら、平均するとこれらのチャネルの20%近くがCRSに接続されていません。
流通チャネルがCRSに接続されていない場合、料金及びインベントリーはエクストラネット経由で手作業でアップデートしなければならず、無駄な時間がとられ、エラーも発生しやすくなります。 チャネルが接続されていてもタイムラグや不正確な情報がある場合、空室状況、料金およびインベントリー(ARI)において食い違いが生じる恐れがあり、予約の重複、オーバーブッキング、更にビジネスチャンスの逸失を招きかねません。
PMSの流通チャネルへの接続性が限られている場合は、ホテル毎にポータルを開発し環境設定しなければなりません。 一方、CRSはチャネル及びソフトウェアの統合がらくにできるように設計されています。 CRSの性能がオープンAPIの場合は、接続が更に簡単になります。 D-EDGE・CRSのような進化したプラットフォームは、より直接的な接続やローカルおよびグローバル販売チャネルを経由したより直接的な接続やリーチを高め、豊富な接続性能を提供します。 チャネルまたはアプリケーションに一旦接続されたら、グループ内の全てのホテルに簡単に展開でき、セットアップタイプの節約になります。
5. シームレスで安全な決済手続き
ホテルにとって、決済処理は常に大きな悩みの種でした。 より多くの予約がオンラインチャネルにシフトし、 新たな決済手段が出現し プレーイングフィールドはより複雑になります。
統括された決済ゲートウェイが 備わったCRSは、 チャネルマネジャー経由のホテルのウェブサイト及びOTAsでなされた予約との摩擦を解消し、ホテルにとっても顧客にとって決済手続きが簡単になります。 これには、クレジットカードの自動確認、事前決済の受付、より幅広い決済タイプの受理が含まれ、全ての手続きは安全な決済環境下において行われます。
6. ゲスト志向の販売及びディストリビューション
より多くのホテルが、顧客プロファイル、ロイヤルティ、コミュニケーションを効果的に管理するために、顧客関係管理(CRM)、またはより良い顧客データ管理(CDM)システムに投資している。h2cの調査によると、現在、ホテルチェーンの54%がCRMを導入し、45%がロイヤリティ・プログラムを運営している。
カスタマージャーニーに沿って非常に多くのタッチポイントがあるため、ゲストデータは不完全、不正確、または複数のプロファイルに分散していることが多い。CRSに接続された堅牢なCDMは、データを自動的にソート、クレンジング、構造化し、1つの統合プロファイルの下に整理するツールを備えています。ホテルは、宿泊前、宿泊中、宿泊後のコミュニケーションをパーソナライズすることができ、適切なメッセージが適切なゲストに届いているという確信を持つことができる。
効果的なCDMの実践は、直接的な予約、アップセル、付帯サービスの販売を通じて収益性を高めるだけでなく、ゲストの満足度、ロイヤルティ、オンラインでの評判も高める。将来的には、POSとの接続が強化されることで、宿泊客の施設内での消費に関する貴重な洞察が得られ、オファーや価格設定のさらなるカスタマイズが可能になる。
総合予約システム(CRS)において模索すべきこと
多くのメリットがあるため、今後数カ月から数年の間にCRSを軸とした戦略にシフトするホテルの数が増えるのは間違いないでしょう。 しかしながら、全てのCRSが同じというわけではありません。 オプションを模索する場合、ホテル経営者は以下のフィーチャーを優先すべきです。
- ホスピタリティ流通テクノロジー及びCRSを軸とした戦略の支援を専門とする革新的なソリューションの提供会社
- 使い勝手がよく安全で、サードパーティの統合が簡単にできるオープンAPIに完全接続されたCRSプラットフォーム。
- 接続を行うチャネルマネジャーは 膨大な数の販売チャネル グローバル及び地域のOTAs、ホールセーラー及びベッドバンクを含むシングルエクストラネット
- あらゆる主要GDSプロバイダーへの直接接続性:Sabre,Amadeus,Galileo, 、及び全世界の旅行代理店及びコーポレートバイヤーにアクセスを提供するWorldspan
- プラグアンドペイのソリューション: カスタマイズできるウェブサイト予約エンジン ホテルのウェブサイトと完全に統合され、ビジターは、いかなるデバイスからもシームレスで多言語による予約ができます。
- 多様な決済手段が使える、安全性が高く完全統合された決済ゲートウェイを利用することにより、取引回数を増やし、予約手続きをシンプルにすることができます。
- デジタル・マーケティング、メタリサーチ、直接販売も専門とするプロバイダーは、ホテルにおいて直接予約を増やし販売コストを下げる支援をしています。
- いつでもどこでもホテルが支援を必要とする場合に、応答性の高いグローバル企業で、ホスピタリティ専門会社の多言語サポートチームがホテルを支援します。
将来の成長のための基礎を築く。
ホテル業界は益々競争が激しく複雑になっているため、ホテルは先進的な接続性、強化および自動化を通して、効率と売上を最大化できるようなソリューションが必要となります。
CRSを軸とした戦略への移行は、一朝一夕には実現できず、用意周到な計画が必要となります。 近い将来におけるホテルの成長を遂げるため、より均衡がとれて、多様化され、採算性に優れた流通戦略を維持するための戦略およびテクノロジーを活用する時です。
CRS中心の戦略に切り替える準備はできていますか?
当社のエキスパートが、お客様のホテルに最適なオプションをご提案いたします。お客様の連絡先を入力していただければ、オーダーメイドのソリューションをご返信いたします。
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